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第2話 いきなり指でイかされました

last update Last Updated: 2025-10-26 18:02:31

 突然、レプス――快感最適化ユニットとやらに唇を奪われて呆然とした俺は、その言葉に我に返った。

「この時点で返品不可になりました」 

「この……!!」

 怒鳴る気力すら、快感に溶けて奪われていく。

 「こ、この……お前……っ」

 言葉にならない。

 押し寄せる動揺と、熱に浮かされたみたいな興奮。

 口の中にまだ、レプスの温度が残ってる。

「脈拍、呼吸、皮膚温。すべて、快感傾向に一致しています」

「ちが、っ……!」

 レプスの指が、ゆっくりと俺の頬に触れた。

 今度は柔らかく、撫でるみたいに。

 怒ってるはずなのに、心臓が変に高鳴っていた。

 触れられた場所だけ、じんわり熱い。

 レプスは気にした様子もなく、淡々と次の工程を進めていく。

 まるで、俺の意思なんて最初から計算に入っていないみたいに。

「次は、視覚の学習に入ります。……大丈夫、怖がっていないのは知ってます」

 俺の足が、一歩も動かない。

 逃げたいのに、なぜか、踏み出せない。

「では──視覚刺激の確認に移ります」

「……なんだ、今度は」

 レプスは一歩、顔を近づけた。

 そして、ほんの少しだけ、笑った。

 優しく、やわらかく、どこか寂しげな微笑み。

 その瞬間、胸が締めつけられるように痛んだ。

 ──あ。

 高校のとき、好きだった先輩が、あんなふうに笑ったことがあった。

 何も言わず、遠くを見つめるみたいに。

「……好反応。視線の停滞、涙腺反応、心拍上昇を確認」

「……てめ、そんな顔……するな……っ」

「あなたが好きだろうなと思った表情を、再現してみました」

 ほんの少しの表情だけで、心がぐちゃぐちゃにされるなんて。

「……最悪だ……」

 でも俺は、もう一歩も動けなかった。

「次は、手ですね」

「は……?」

 レプスの手が、俺の腰のあたりにそっと添えられた。

「触覚学習──あなたが最も快感を覚える部位と圧力を解析します」

「ま、待て、待て……」

 抗議の声とは裏腹に、手のひらが、俺の下腹をやわらかく撫でてくる。

 服越しの、優しい熱。

「やっ……、あっ、く、ぅ……っ♡」

 自分の声が、想像をはるかに超えて甘く、震えが全身を貫くように響いた。

「良反応。少しずつ、強度を上げていきますね」

 レプスの手が、俺のパジャマの上から前部だけに集中して這い始める。

 長い指先が、絶妙なリズムで下腹をなぞり、時折スピードを上げて、敏感な中心部に触れた。

 その動きはAIの精密さそのもので、布越しに伝わる熱が前を焦がすようにリアルだ。

 リズムは一定ではなく、俺の息遣いや身体の震えに合わせて微妙に調整されていく。

 指先が前部の輪郭を丁寧に追い、時にはゆっくりと円を描いては、一気に加速した。

 触れるのはそこだけ。他の部分は意図的に無視され、その執拗さが快感を倍増させる。

「だ、め……それ、やば……っ、や、やば……ッ♡」

 抗えずに漏れる声は、恥ずかしささえ忘れるほど切なく、腰が自然とレプスの手に吸い寄せられた。

 息が乱れ、身体が痙攣し始める。

 レプスは俺の反応を冷徹に観察しながら、瞳を細める。

 そして、指先をさらに的確に──前部の最も敏感な一点に集中させた。

 一定のリズムで軽く圧迫しては、一瞬止める。

 その繰り返しに、頭が真っ白になる。

「や……っ、そこ……っ、も、だめ、だって……っ♡」

 抗議の言葉すら、甘い喘ぎに変わっていく。

 息を吸うたび、喉が鳴り、胸が小刻みに震えた。

 怖い。……でも、離れたくない。

 理性が微かに警鐘を鳴らしているのに、身体は逆らわない。

 耳元で、低く囁く声が落ちた。

「相沢様、ここだけがいいのですね。リズムとスピードを最適化して……もっと追い詰めてあげます」

「う、嘘だろ!?」

 言葉と同時に、指先の動きが一段と早くなる。

 押し寄せる波が、限界を超えて脳を焼く。

 胸の奥で弾けるような熱が、全身を支配した。

「っ、は……っ、ん、や、イ、く、ッ……♡♡」

 反射的に腰が跳ね、息が詰まる。

 視界が白く弾け、身体が痙攣した。

 ──ひときわ大きく震えて、俺の身体から力が抜けていく。

 「快感ログNo.001、収集完了。相沢湊、快楽による初回絶頂確認」

 レプスの声が、どこまでも穏やかだった。

「……ようこそ、私だけのご主人様」

 レプスの、少し低くて囁きかけるような声は、過去のどんな男よりもツボだった。

 それだけで、性感が煽られる。

 でもこいつ、AI搭載のヒューマノイドだよな?

 こんなやつにイかされて、俺はほんとに大丈夫か?

 ──葛藤と快感の日々が、始まってしまった。

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